ラザニア:層に重なるイタリアの味

イタリアのトラットリアから、ヨーロッパの家庭、アメリカのレストランに至るまで、世界中で愛されているラザニアは、イタリアが誇る最高の料理のひとつです。平たい板状のパスタと、濃厚なトマトラグーソース、たっぷりの挽肉、最高級のチーズを幾層にも重ねてオーブンで焼き上げてつくります。レシピを聞くだけで、その人気の理由がわかるというもの。このおいしい料理は一体どこで生まれたのでしょうか。そして最高のラザニアつくる秘訣はなんでしょうか。

ラザニアは今でこそイタリア料理として知られていますが、実はその起源は古代ギリシャにあります。ラザニアという名前は、古代ギリシャ語で初めてパスタの意味を持った単語「ラガノン(laganon)」に由来します。初期の頃のラザニアは、今私たちが知っているものとは違いますが、パスタとソースを重ねた層状の料理である点は同じです。つまり、ラザニアという名称が、使われている食材ではなく、調理法につけられていたことを意味します。

そのため、多くの国がこぞって、私たちが慣れ親しんでいる現在の形のラザニアを生み出したのは自分たちだと主張しました。一部の英国の研究者らは、現在のレシピのオリジナルがイギリスの料理本に記載されていると主張しています。しかし、14世紀のナポリでつくられ完成したものであることに異を唱える人はほとんどいません。

ナポリの伝統料理「カーニバルのラザニア(lasagne di carnevale)」が生まれたのはナポリです。ナポリ風ラザニアは、よく知られているレシピとは異なります。地元でつくられたソーセージや小さなフライドミートボール、固ゆで卵、リコッタおよびモッツァレラチーズ、ナポリ風ラグーソースを重ねたスタイルです。ラザーニャ・アル・フォルノ(lasagna al forno)は現在世界中で支持されているレシピで、エミリア・ロマーニャ州と深い関わりがあったとされています。濃厚なラグーソースにクリーミーなベシャメルソース、パルミジャーノ・レッジャーノチーズに牛肉と豚肉が入った、かなりこってりしたレシピです。18世紀後半にイタリアの移民が米国に持ち込んだのがこのレシピで、瞬く間に国際的な人気を獲得しました。

では、最高のラザニアはどのようにつくられるのでしょうか。定番のイタリアのラザニアは、基本の材料がシンプルなことで広く知られています。平たい板状のラザニア(卵を練りこんだ生の平たいパスタでも代用可)、トマトベースのラグーソース、本格的なパルミジャーノ・レッジャーノチーズ、品質のよい肉を使用します。イタリア系アメリカ人シェフには好まれないこともありますが、ベシャメルソースも重要です。また、シェフの好みに応じて、野菜やワイン、リコッタチーズ、調味料などの食材が加わったり、その加減が調節されたりします。

材料の比率と食感についても同じことがいえます。ジョルジオ・ロカテッリは伝統的なラザニアは「歯ごたえがあり、水分のない料理」であるべきだと主張し、しっとり焼き上げるレシピは「シェパーズパイのじゃがいもをパスタに変えただけ」なのでおすすめしないと言います。とはいえ、ソースが重要ではないということではありません。完璧なソースのレシピについてはシェフによって意見が分かれますが、ソースを数時間煮込んで風味を最大限に引き出すのがベストだという考えは一致しています。この意味では、最高のラザニアをつくるのも、定番のイタリア料理をつくるのもそれほど変わりません。シンプルに、時間をかけて、最高の食材を使用して、情熱を込めてつくればいいのです。